最果てでもお約束。
「だろうなぁ、ぼくも基本的にはそうだと思うんだよ」
じゃあなんで、と聞かれそうなので続けて。
「結界があるんだ。神社には」
「おお?」
またまた珍妙な顔をしてるんだろうなぁ・・・。
「違うぞ。アキラが想像してるような魔法みたいなモンじゃない。なんつーかな・・・心理的なモンだ」
そう、残念ながらこのお話に魔法の類は出てきません。ファンタジーカテゴリの癖に。
「ぬ・・・」
あ、残念がってる。わかりやすい奴め。
「東の宮とな、『真睡』にある西の宮ってのはそれはそれは地域密着型のありがたーい神社なんだよ」
特に何かしてくれるって話は聞いた事ないけれどね。
「ありがたい?」
「うん、ありがたい。何がありがたいのかは知らないんだけれどね。だけど、この町に生まれ育った人間なら誰もがありがたがってる」
小学校や中学校では遠足やらなにやらで必ず行くし、放課後ここで遊んだり将来や恋について話す学生も多い。
「んで、なんでそこに逃げる?んですか?」
いや、敬語にしなくても話すけれども。蹴られたら嫌だし。
「あー・・・うーん、追いかけてて逃げられる。逃げてるのは”南”の人間だと思われるわな」
「ふんふん」
「だからさ、そんな人間にはこの町のありがたいものは関係無いんだよ。でも、追ってる側は関係ある。まさか、あそこは隠れないだろう。神聖な場所だし。ってな」
あの時もそう思った。
「ふぅん・・あ、でもさ、追っ手がそこまで読んでる可能性は?」
やっぱり読みが良い。頭は悪くない・・・のか?(疑問)
「もちろんある。実はかなりその可能性は高い。今まで何人もの不審者が神社に隠れたからね」
「じゃあなん」
「でもな、これが一番逃げられる可能性が高いんだ。あの状況であの場所。相手が車なら本来ゲームオーバー。これは、どんなに最悪でも唯一の可能性」
「追っ手が来られないからちょっと油断してた。ごめん・・・」
多分アキラは今ばつが悪そうにうつむいているのだろう。
どこまでも似てない癖に。心臓が血では無く、火を送り出しているかのように熱い。
「アキラ、目の前に出口がある」
「お・・・出口ってゆーか裂け目だね」
いつか見た光の裂け目が、また目前に迫って来る。
さぁ、あの時のやり直しだ。
< 68 / 140 >

この作品をシェア

pagetop