最果てでもお約束。
光の裂け目はもう目前まで見えてきた。
「こう・・・外見える?」
ゆうは相変わらずの小声で心配そうに聞いてくる。
「ん・・・ちょっと覗くにしても角度が無い。降りてみないと」
塀の上から地面までは約1mとちょっと。そう高くない。
ぴょんと飛び降りる。体は走り回って疲れきっていたのに、あの窮屈な空間から抜け出せた為か羽が生えたように軽かった。おそらく、ぼくの脳みそはその時無かったのだろう。
「・・・見渡しても敵影無し。ゆう、大丈夫だぞ」
スタスタと周りを確認しながら神社の入り口である階段を目指す。目印になっている鳥居が、今日はいっそう映えて見えた。
「ふはー・・なんとか一息だな」
言いながらゆうも塀から飛び降りる。振り返りもしなかったが、すたんっとゆうが着地した音を聞いた。
「それにしてもなぁ・・・この話はネタになりますねぇ」
木漏れ日に手を透かして、ゆうが歩いて来るのを待つ。
「はいはい武勇伝武勇伝」
ぱんぱんっとゆうが服を叩く音。あ、そうだった。ぼくの買ったばかりのシャツも随分と汚れているだろう。
「なぁゆう、高校卒業記念で買ったシャツがもうこんな・・・」
シャツの裾を掴んで広げながらゆうに向き返―
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