最果てでもお約束。
「う・・ふぁああああ!?」
途端に意識が覚醒した。ゆうの叫び声。頭部から垂れてきた血のせいで霞む眼を凝らして見ると、ゆうが手を押さえつけられている。そしてその右手の薬指は、曲がってはいけない方向に曲がっていて。
「うわっうわああああああゆう!ゆううう!!」
地面に這いつくばったまま、なんとかゆうの元に行こうと手を伸ばして地面を掻く。
たったの数mなのに、その間はちっとも進まなくて。もうぼくがゆうに辿りつく前にゆうは殺されてしまうんじゃないかと、パニックを起こしていた。
「ゆう!ゆう!助けて!誰か!助けて下さい!ゆうを助けて!助けて!」
誰でもいい。なんでも良かった。ゆうを助けてくれるならば、なんでも良かった。
一番近い足まで這って行って、その足を掴む。
「助けて下さい!」
掴んだ右手ごと顔を蹴られた。
ゆうから少し離れてしまったけれど、関係無い。もうぼくじゃ駄目だ。誰かに、助けてもらわないと。
「助けて下さい!」
またそこから一番近い人の足元まで行って懇願する。
やはり靴を掴んだ手ごと顔を蹴られる。
口の中が血の味でいっぱいだった。
「ぎゃああああ!」
またゆうの絶叫。もう一本指を折られたのかもしれない。
ぼくは二度三度と顔を蹴られ、もうゆうが見えなくなっていた。
目の前には・・・辿りつけなかった神社の入り口。その目印である真っ赤な鳥居。
「誰か!助けて!!!」
奥歯も折れた、鼻は曲がって血がいっぱい出てる。知らない内に涙まで垂れ流しで、神社に向かって叫んだ。
後ろからは乾いた笑い声。神頼みかよと、嘲る声。
殺意がこみ上げてくる。殺してやる。いや、殺して欲しい。誰か・・奴等を・・
「殺してくれぇ!」
神社に向かってあらん限りの声で吼えた。
声は、すぐ耳元でまるで鈴が鳴るように聞こえた。
「物騒だな」
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