最果てでもお約束。
今朝会った。まだ12時間も経って無い。けれどその顔で、その柔らかい手で、ぼくの心はズタズタです。
「…ぐしっ」
涙が出て来た。
ぼくはその様をアキラに見られたく無くて、背を向ける。すると歪んだ世界に人影が3。
ついに来た。
ぼくは目に溜まった涙を左腕で拭って走れない足に鞭打って駆け出す。人影に向かって。「こう!」
そうだな、アキラ。ぼくが本当に願っていたのは二人して無事に逃げ切る事。手に手を取って神社の裏の森に。誰かの犠牲なんて、願って無かった。けれど、もう遅いや。足を痛めたぼくを連れて逃げれば、必ず追いつかれる。ゆうの時のような助けは無いだろう。それは出来過ぎ。ならば、少しだけでも時間を稼ごう。
アキラ、今度こそ逃げろ。これが、ぼくからのありがとうだ。
「シリアスシーンか?」
………
「…はい」
「ん…なら待つか?」今日はなんて日だ。
「登場がちょっと早くなっても良いなら是非」
「ふん…やっぱりあの日の焼き増し、か。さっさと済ませよう」
ぬぅと視界がジージャンで埋まる。その左手には黒い鞘。右手には空気も凍るような白刃。彼も、この焼き増しをしてくれるらしい。あの時と同じように、ぼくにはただその大きな背中だけ見せて。
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