最果てでもお約束。
ぶんっ。彼とその男の間にはゆうと二人の男が横たわっている。だから彼は一歩踏み出さなければいけなかった。それがその男には大変なラッキーになる。
一歩彼が踏み出す間に、その男は左腕で顔を庇う事が出来た。
めきり。
結局は、その左腕もろとも袈裟に討たれてその場に伏せた。ラッキーだったのは、左腕の骨折と左肩の骨折で済んだ事。この件で出た怪我人の中では一番の軽傷だったから。
どむんっと彼の背中に白球が命中する。
そうだ、そういえば飛び道具を使う相手がいた。
ゆうはその一撃で足を圧し折られた。彼は、まったくの無傷でゆっくりと射出点を見る。
恐怖で髪が本当に白くなるのならば、ぼくはきっとその時白髪になっていたろう。
その時初めて見た救世主の顔は、この世のモノとは思えない、例えるならば性質の悪いホラー映画から飛び出してきたようだったから。
目の下はクマで真っ黒。唇も赤みは無く黒ずんでいる。目は赤く充血しているくせに、その中の黒目は黒々と、いや、むしろ明るささえ佇んでいるように光っていて。
「ひゃああああああ!?」
次弾を撃とうと狙いを定めていたのかもしれないその男はきっと、彼と目が合ってしまった。ぼくでも走る事が出来たなら逃げ出していたかもしれないその凶眼。
白球の射手は逃げ出した。愚かにも、人通りのまったく無い道を一目散に。
「・・・・・・」
彼は二度三度と首を鳴らし、あろう事かその右手に握っている物を投げた。本気で。
ぎゅるぎゅると音が聞こえるかのような高回転で鉈は白球の射手に飛び、そして
どさぁ・・・・。
白球の射手は無様に転んだ。転んで、大急ぎで立ち上がり、また転んだ。
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