最果てでもお約束。
「あ、あぁごめんごめん!つい目に留まっちゃってさ。前もこんな事で怒られたんだった」
タハハ、じゃないです。成長しましょう。
まるで乗りなれたライダーのようにバイクを降りて、名残惜しそうにシートを撫でる。
「売ったらいくらくらいになるかな・・・」
「こらこらこら」
じょーだんじょーだん!と言ってまた無邪気な笑顔。いかんなー、この顔は困る。年の頃20前後・・・もしかするともっと若いかも。それにしても・・
「見ない顔だね・・・何処から来たの?」
いつもは左手にある”携帯”が無いせいでどこか落ち着かない。
「ほー、いっつも思うんだけどさ、なんでそんな事わかるのかねー?」
この格好そんなに変かな?とジャケットのラペル(襟)をぴっと伸ばす。
「いや、他の土地は知らないけれどね。ここはとても閉じた土地だからさ」
理由はもう一つあるけれど、まぁ置いておこうか。
土地についても嘘ではないけれど隠している事がある。
この町は立地・・・というか交通の面では非常に開けている。海沿いであるし、大きな国道が町の真ん中を東から西にかけて貫いている。開けているかといわれると閉じているのだけれど、南にある”島”に巨大な橋まで架かっており、全体的に見ても町全体はまったくもって閉じてはいない。あくまで交通の面で言えば、だ。
ちょっとした・・・地元の人間は慣れてしまっているけれど、ちょっと変わった土地性によって他の町から人が来ないのだ。
お陰で寂れる一方ですよ。
「ちなみに、どっちのほうから来たの?」
「ん?えーと・・日を背にしてきたから・・・東から来たのかな?」
えらいアバウトな返答だな・・・・しかし、それなら運がいい。
我が家はこのちょっと変わった町のおよそ東端にある。まだ町には入っていないと言っても過言では無い。町の事についてもし何も知らないのであれば、ここで教えて貰える事は非常にラッキーだ。
< 8 / 140 >

この作品をシェア

pagetop