最果てでもお約束。
「そんな」
「庇ってくれて、ありがとう」
顔を上げた先に顔をくしゃくしゃにして泣いているアキラ。
「朝ごはんもありがとう。昼ごはんもありがとう。守ってくれてありがとう。一緒に走ってくれてありがとう。一緒に怖がってくれてありがとう。あー・・・もっと言いたいけど今頃怖くなって足ががくがくするー」
うえぇぇぇと泣くアキラ。
おいおい、なんだよ。顔を真っ赤にして損した。っとに、びっくりさせるなよ。
恐怖を思い出して混乱してるだけかよおいさっきのぼくのドキドキはどうしてくれるんだよもっと気の利いた何かを言ってぼくを覚醒させちゃったりしてくれるんじゃないのかよったくもぅ見かけ通りにひ弱なやつめ情けないやつめおい。
なんだよ、この右目から垂れて来た液体は。
目の前には肩を震わせて泣きじゃくっているアキラ。
その前には音も立てずに涙をだくだくと垂らすぼく。
これはきっと涙だけれど、違うな。
涙はもっと悔しくて辛いもんだ。
こんな、温かくなんて、あるもんか。
右腕の袖でびっと垂れていたモノを拭き取る。不思議な事にそれは止め処なく流れていたように思えたのに、一回で止まった。
目がピーリングされたようにつるんとしているように思える。
なんだか色が鮮明に見えた。あぁ、アキラ、お前そんな顔してたのか。
この気持ち、どこかで味わった事がある。いつだったかな。
えーと・・・あれは・・・
「ぐぅぅ」
泣いていたアキラがぴたっと泣き止む。
「・・・・・・」
「・・・・・・・・え・・・えへへ」
もう雰囲気ぶっち壊し。
「愛する人が死んだのに鳴る腹が憎らしいと言った人がいたそうですえへへ」
「シリアスシーンからやり直すか?」
泣く真似をしてみる。もうきっと涙は出ないだろうけれど。
「先に帰ってご飯にしますっ」
ぼくからコンビニのビニール袋を奪って走り出すアキラ。
ぐだぐだとコンビニで立ち読みしていたらもうさすがに世界はほの暗く。
その薄闇でアキラは振り返る。
「次に庇ったりなんかしたらハイキック!」
その笑顔だけで、弁当を600円まで許可してやろうかと思った。
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