現場系男子にご用心！？

「岡田さん」

「・・・何？」

「岡田さんはタイに行くの・・・？」

そう言った瞬間、岡田さんの動きが止まり目が大きく開かれる。
話を逸らさないで欲しい、ちゃんと真実を語って欲しい、そう思いながら私はじっと岡田さんを見つめたまま、ぐっと唇をかみしめた。

「・・・どうしてそれを？」

「秋元さんから聞いた。ＫＩＺＵＫＩはタイにも工場があって、技術指導で何人かあっちに行っているって。もしかしたら岡田さんもそんな話がでているんじゃないか、だから私との結婚を焦っているんじゃないかって、そう思って」

岡田さんは少し瞳を左右に揺らした後、まだ吸える長さだった煙草を灰皿に押し付けた。
そして天井を見上げて、ふう、と息を吐く。

「・・・そうか。過去にも工場に来ていた社員が何人かタイに行っているから、知ってるんだよな。・・・そうだよ、俺にタイへの転勤の話が出ている。里緒奈の思っていた通りだよ」

「やっぱり、そうだったんだ・・・。でも、じゃあなんでそれを言わなかったの？どうして隠していたの？」

その問いに、少しの沈黙が流れる。
重々しい空気の中、ゆっくりと岡田さんは話し始めた。

「ゴメン、それは俺のエゴだよ。何年間も遠距離でそう簡単に連絡も取れなくなる、そんな中で里緒奈の気持ちが変わってしまったらと思ったら不安で苦しくて、転勤するかもしれないなんて言えなくてね。それだったら早くに結婚して繋ぎ止めておけばいい、そう思ってしまったんだ」