現場系男子にご用心!?
「・・・話ってなんですか?」

「ん?岡田くんとの事だよ。出てるんだってな、海外の話」

仕事に没頭していて忘れていたことを課長に掘り起こされ、胸がドキリと鳴った。
考えないようにしていたのに、その話をされるとやっぱり動揺が隠せない。

「そ、そうですね。話では来年の頭だそうで・・・」

「せっかく仲良くなったと思ったのになぁ。まあ、彼は優秀だから仕方がないな。将来の為だ、行った方が必ず彼の為になる」

課長は足を組んで、前で腕を組みながらそう話した。
しかしそう言いながらも、課長の顔は少し残念そうな顔をしていて、その表情から見てもこの工場で岡田さんがみんなから慕われていたことが分かる。

「私もそう・・・思います。少し寂しくはなりますが・・・」

「で、どうするんだ?お前は。付いていくのか?」

その言葉に、ごくりと息を飲む。
まさかストレートにそう聞かれるとは思わなかった。缶を握っていた手が動揺で少し震える。
課長は組んだ手をテーブルに乗せ、じっと私を見据えていた。

「ついていく、って・・・。それは、まだ。私この仕事辞めたくないし・・・」

「でも岡田くんの事はどうするんだ?あっちに行ったら早々戻っても来れないし、会える機会も減るんだぞ?戻ってくるまでお前はずっと待っているのか?それはお前にも岡田くんにも辛い事じゃないのか?」

「それは・・・」

そこから何も言えなくなって口を噤んでしまう。
課長の言っている事が、岡田さんに付いていかせようと説得しているように聞こえたからだ。


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