ドラマチックSボーイ
静side
「あ、の…舞ちゃんになにがあったのかしら…?」
俺との口ゲンカに負けたマイは、地団駄を踏みながら『着替えてくる』と言ってリビングから出て行った。
突然の舞の狂変ぶりに驚いた舞のお母さんが恐る恐る俺に尋ねる。
俺はさっきのやりとりを思い出し、フッと笑ってから答える。
「…昨日、舞は一瞬にして正真正銘の女優になりました。
芸名は『上原マイ』。名前をカタカナにしたことで、
自分だけど自分じゃない。女優というもう1人の自分を創り上げ、
なおかつ本当の自分と女優の自分とを使い分けられるようになったんです。」
「…はあ……。…?」
出来るだけ簡単・簡潔に説明したのだが、
舞のお母さんにはよく伝わらなかったみたいだ。
「とにかく、これからの舞を見ていて下さい。
女優の舞はさっきみたいに、喋り方も、性格も、全て変わってしまいます。」
俺も楽しみだ、これからが。