ドラマチックSボーイ
「俺はね。」
コトン、グラスをテーブルに置いて彼は呟く。
「舞と交わした約束のためにこの世界に入ったんだ。」
「―――っ!」
ズキン、と胸が鳴るのがわかった。
やっぱり彼は12年前のあの日に交わした約束を覚えていた。
そして今、
その約束を果して私の目の前にいるんだ。
わたし―――……
なにも言えずにただ俯く私に彼は続ける。
「芸能界に入っても意味は無いって思った。
もっともっとドラマや映画に出て、たくさんの人が知っている俳優にならないと…」
―――舞に逢えないから。
静クンの真っ直ぐな瞳が、私を突き刺した。