ドラマチックSボーイ
紅い頬を誤魔化すかのように、
私はワックスで整えた髪に手の櫛を何度も入れる。
おかげで前よりボサボサになってしまったことに
私は気付かない。
…それほどまでに余裕が無いのだ。
深呼吸をひとつして、頭の温度を下げる。
ドクドクと脈打つ心臓に手を当てて
隣にいる静くんに問う。
「朝、言ったことって…」
「冗談だよね?って言いたいんでしょ?」
…!
質問を質問で返されてしまった。
「…違うの…?」
「本気。」
「…そお、ですか…。」
即答された私はただ受け入れることしか出来なかった。
もう、疲れた……。
夢なら早く覚めてほしい。
この時、彼の告白を素直に喜ぶことが出来なかった私。
そんな私の態度に一瞬歪んだ顔をみせた静くんに
私は気付くはずもなく、
彼に聞こえないくらいの小さな溜め息を吐いていた。
なぜ彼の告白を本気と捉えることが出来なかったのか。
それは、
滝沢静が、蓮見静だから。
告白された私は、そう思ってしまったんだ。
職業なんて考えずに、彼を一人の男の子として
見ることが出来なかった。