ドラマチックSボーイ



――――――


舞が去った屋上にまだ2人は居た。


静は「仕事があるから」
智樹は「お腹が痛いから」


という嘘で1時間目をサボってしまった。

しかし静は午後から本当に仕事があり、
それまでどうしようかと考えていた。


サボった理由はやはり静の野次馬除け。


そうなってしまったことに、静は酷く落ち込んでいる。



「どうしてだよ?」

その理由を智樹が尋ねる。


フェンスに背中を預け、俯きながら静は答える。

「この前、修吾さんと仕事が一緒になった時に話したんだ。
修吾さんは…街を歩いても声をかけられることは無いらしい。」


日本が誇る若手トップ俳優・世良修吾。
彼のオーラは無意識にも人を寄せ付けない力を持っている


と、溜息混じりで静は呟いた。


静は彼をプライベートでは兄貴のような存在で、俳優としては尊敬している。

世良修吾は静の目標だった。



「今朝、生徒の反応を見て俄然やる気が出たよ。」

そう言った静の目は、
智樹を震えさせるほど真っ直ぐだった。




――――――





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