平凡な毎日に恋という名の調味料(スパイス)を
◇ ◇ ◇
いつも通り。普段通り。
そう思えば思うほど、自分の中にぷかりと湧き出た気持ちを嫌でも意識してしまう。
朝、「いってらっしゃい」と振る手に添えられる緩んだ笑顔。
棚の上の方にある食器を取ろうと背伸びしたときに、後ろから伸びてくる長い腕。
いつもと変わらず美味しいお弁当の甘い玉子焼き。
そしてその隣に必ず浮かぶ、愛おしげに膨らんだお腹をさする希さんの穏やかな微笑みが、とたんに口の中を苦くする。
平凡な毎日に退屈してはいたけれど、こんな想いを望んでなんかいない。しまい込んで、消化して、キレイさっぱりなかったことにしよう。
緑と赤のコントラストも美しいアスパラベーコンを咀嚼し、飲み込んだ。
「旨そうですね。北村さんが作ったんですか?」
肩越しに覗きこまれた顔から発せられた声が、耳を通り過ぎる。
「お疲れさま。いまからお昼?」
脩人くんの手には、ハンバーガーショップの袋が提げられていた。今日も朝から外に出ていたようだ。
「コレ食べたら見積もり作って、また外です」
「えっ、もうそんなことさせられてるの? スパルタだね、営業部」
まだ入社して一ヶ月そこそこの新卒くんには、さすがに荷が重い仕事だろう。それなのに。
「もちろんまだ、篠原さんにマンツーマンで教えてもらいながらですけど」
不服そうにハンバーガーに齧り付く。やっぱり彼は、そうとうの負けず嫌いに違いない。
でもこの分だと、戦力になるのもそう遠くないだろう。
いつも通り。普段通り。
そう思えば思うほど、自分の中にぷかりと湧き出た気持ちを嫌でも意識してしまう。
朝、「いってらっしゃい」と振る手に添えられる緩んだ笑顔。
棚の上の方にある食器を取ろうと背伸びしたときに、後ろから伸びてくる長い腕。
いつもと変わらず美味しいお弁当の甘い玉子焼き。
そしてその隣に必ず浮かぶ、愛おしげに膨らんだお腹をさする希さんの穏やかな微笑みが、とたんに口の中を苦くする。
平凡な毎日に退屈してはいたけれど、こんな想いを望んでなんかいない。しまい込んで、消化して、キレイさっぱりなかったことにしよう。
緑と赤のコントラストも美しいアスパラベーコンを咀嚼し、飲み込んだ。
「旨そうですね。北村さんが作ったんですか?」
肩越しに覗きこまれた顔から発せられた声が、耳を通り過ぎる。
「お疲れさま。いまからお昼?」
脩人くんの手には、ハンバーガーショップの袋が提げられていた。今日も朝から外に出ていたようだ。
「コレ食べたら見積もり作って、また外です」
「えっ、もうそんなことさせられてるの? スパルタだね、営業部」
まだ入社して一ヶ月そこそこの新卒くんには、さすがに荷が重い仕事だろう。それなのに。
「もちろんまだ、篠原さんにマンツーマンで教えてもらいながらですけど」
不服そうにハンバーガーに齧り付く。やっぱり彼は、そうとうの負けず嫌いに違いない。
でもこの分だと、戦力になるのもそう遠くないだろう。