平凡な毎日に恋という名の調味料（スパイス）を
「おはようございます！」
「おはようございます。今日もよろしくお願いします」

平日のランチタイムをお願いしているパートの主婦二人だ。

彼女らは、子どもたちが保育園や小学校に行っている時間を利用して働いている。
ときどき、子どもが体調を崩したり、行事があったりして休まれることもあるが、最低どちらか一人はいてくれれば、よほどのことがない限りはなんとかなる現状だ。

夏休みなどはどうするのか気になり面接時に晃が尋ねたら、保育園では預かってもらえるし、小学生は学童保育に入れたという。
待機児童問題が全国的に問題になっている昨今で、比較的子育て世代に優しい地域でよかったと話していたのが、やけに晃の印象に残っていた。

「そういえば、明里（あかり）ちゃん、大きくなったでしょう？」
「ええ。この前、わざわざ動画を送ってきましたよ」

妊娠中の希の良きアドバイザーだった二人は、産まれた晃の姪のことも気にかけてくれている。

「夏が終わって涼しくなったら、母娘でやっと旦那の所へ行くらしいです」
「それは、じいじとばあばが寂しがるわね」
「いや、もうすでにギブアップし始めました」

共働きで双子を育て上げた晃たちの両親も、さすがに古希近くなっての孫育てはキツいらしい。
単身赴任で寂しがっている夫の元へ早く行け、と急かしていた父母を思い出して、晃は苦笑した。

「ちょっと買い出しに行ってきてもいいですか？」
「はーい。お掃除、終わらせておきますね」
「いってらっしゃい」

準備を二人に任せると、晃はセミがうるさく鳴いている外へ出た。
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