君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨
「奏、お母さん今日遅番勤務だから帰り遅いけど、ひとりで大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「なにかあったら電話して。無理しないでね」
午後からお母さんが仕事に出かけて、あたしは家でひとりになった。
午前中、少しウトウトできたせいか、昨日に比べれば体はそれなりに復調している。
精神的にはまったく回復できていないけれど。
亜里沙が休み時間ごとにスマホで届けてくれるメッセージが、心の慰めだった。
『少しは眠れた? ご飯食べてる?』
『んー、あんまり食欲なくて』
『まかせて! 学校終わったら、奏の好きな食べ物持ってお見舞いに行くね!』
スマホの画面を通して、亜里沙の力強い励ましが伝わってくる。
おかげで、ベッドから起き上がれるくらいの気力が回復した。ありがと亜里沙。
ジャージ姿でリビングのソファーにダラッと座って、リモコンを操作してテレビをつける。
そして午後の情報番組のお料理コーナーをボーッと眺めていた。
見たい番組があるわけじゃなく、ただ家の中がシーンと静まり返っているのが嫌だった。
物音ひとつしない、静かな空間にひとりでいると、不幸な思考に飲み込まれて抜け出せなくなってしまう。
たとえ一方通行であっても、テレビから音や声が聞こえてくれば、ほんの少しだけ気休めになった。