君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨

 煮崩れした豆腐状態だった頭が、一気に覚醒する。

 手で口元を覆って、ひたすら混乱しながら食い入るように画像に見入った。

 どうしよう、どうしよう! まさか凱斗が来てくれるなんて!

 び、病気でお見舞いされた時って、どういう対応するのがマナーなんだっけ?

 まずは『ありがとう』ってお礼を言って、それから……。

 帰ってもらえばいいんだっけか?

 いや、追い返しちゃダメでしょ! じゃあ家の中に入れるの? 凱斗を?

 ええ!? だってお母さんいないのに! 凱斗と家の中にふたりっきり!?

 そ、それはちょっと……!

 っていう考えを、頭の中で5秒ぐらいの間に高速で巡らせながら、インターホンの前で声も出せずにジタバタする。

 すると凱斗は、無音の対応を拒絶と受け取ったらしい。

「俺の顔、見たくないか? 当然だよな。わかった、このまま帰……」

「ま、待って凱斗! 違うの!」

 凱斗の顔を見たくないんじゃないの!

 そうじゃない! そうじゃなくて、あたしの……。

 あたしの顔、見られたくないの! 洗ってないから!

 だって今日学校休んだし。具合悪かったし。

 朝からずっとベッドの中でうだうだしてたから、洗顔サボッちゃったの。

 女の子が、洗ってない顔で好きな男の子とご対面なんてできないよ!

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