君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨

 背中をかがめて、膝の上で両手を組み、凱斗はポツポツと慎重に言葉を吐き出す。

 うつむき加減の表情は、ずいぶんと沈痛だった。

「俺がもっと早く、入江にキッパリ言うべきだった」

「でもそれは、入江さんを思いやったからだし」

「そもそも、中学のときにちゃんと別れておくべきだった。自然消滅じゃなく」

「そんなのどこにでもある話だよ。ずいぶん前のことだし」

「あのとき追いかけていればよかったんだ。そうすれば……」

 あのときああすれば。こうすれば。

 そうすれば、入江さんは自殺しないで済んだんだろうか。

 彼女の心は救われて、万事解消、円満解決、万歳三唱、大円団。そんな風に……。

 ……ならなかったろうと、思う。

 入江さんの望みは、凱斗に慰めてもらうことじゃなかったから。

 入江さんは凱斗が欲しかった。凱斗と恋人同士になりたかった。

「でも俺、入江が望むものは与えてやれなかった」

 凱斗が、ポツリとそう言った。

 だから彼女の後は追いかけられなかった。

 入江さんの望みを叶えるためには、凱斗の気持ちを曲げなければならない。

 それじゃ今度は凱斗が救われない。

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