君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨

「凱斗、あたしも一緒に行く」

 思わず、そう口走っていた。

 自分でもちょっとビックリしてしまうくらい、自然に出た言葉だった。

 行動することによってなにかが変わるかもしれない。変わらないかもしれない。

 どっちに転ぶか、誰にもわからない。

 わからないなら……やってみるしかない。

「あたしも前に進みたい。凱斗と一緒に」

 少なくとも学校休んで、まずいお粥を食べて、お料理番組をボーッと眺めているよりマシなはず。

 貝や亀みたいになって、悩んで悩んで、もういいだけ悩んだんだから、そろそろ悩む以外のことをしてみたっていい。

 だから凱斗と一緒に行く。入江さんの家へ。

「向坂……」

 驚いたようにあたしの顔を見ていた凱斗が、ゆっくりうなづいた。

「ああ、俺と一緒に行こう」

 入江さんの影に飲み込まれる以外、なにもできないと思っていたけど、やってみよう。

 行ってみよう。なにかが変わるかもしれないから。

 変わらないかもしれないけど、かえって状況、悪化するかもしれないけど。

 それでも縮こまった亀から、手足を伸ばした亀には進化できるから。

 このままじゃ、あたし絶対嫌だから。


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