君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨
どこか遠い場所から、教会の鐘の音が聞こえてきた。
向かいの道路の柴犬が鼻先をクンッと上げ、澄んだ黒い瞳で無心に音を追う。
色づいた空気に染み入るように響きわたる、優しい音色があたしの心を震わせる。
降るような透明な音に包まれ、あたしと凱斗は向かい合い、見つめ合う。
言葉にできない、細い細い糸のような何かが薄っすらと、でもたしかに繋がったような気がした。
このまま、時間が止まってしまえばいいのに……。
「行こうか」
「うん」
でも、立ち止まってはいられないんだ。
手足を伸ばした亀に進化しなきゃ。前に進まなきゃ。
だから行こうね。勇気を出して一緒に行こうね。
あたしと凱斗は、入江さんの家に向かってまた歩き始めた。