君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨

 ……凱斗はいま、なにを思っているんだろう。

 どんなことを語りかけているんだろう。

 入江さんに謝罪しているんだろうか。

 その謝罪は、彼女に届くんだろうか。

 そのどの答えも、あたしには知りようもない。やがて凱斗がそっと目を開け、あたしに場所を譲ってくれた。

 そしてあたしは、初めて入江さんと正面で向かい合う。

 黒く細長い位牌の真ん中に書かれた、金色の文字。

 入江さんに新しく与えられた名前が、入江さんがもう、この世の人ではない証。

 お線香から漂う独特の香りに包まれながら、あたしはその文字を静かに見た。

 ここで、なにを思えばいいんだろう。

 彼女に、なにを伝えればいいんだろう。

 伝わるかどうかの保証すらないのに。

 そもそも彼女は、あたしに手を合わせてもらいたいなんて、これっぽっちも思ってもいないのだろうに。

 嫌がっているかもしれない。だってあたしなら嫌だもの。

 それを無視して、自分が前に進むためだけに、こうして手を合わせている自分。

 死んでからまで……彼女を傷つけているんだな……。

 写真も見られず、顔すら知らない入江さんは、やっぱり今でも影でしかなくて。

 あたしは大きな幻影の前で、飲み込まれそうな圧迫感に耐えていた。

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