君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨
「え? いいんですか?」
「ええ。せっかく弔問に来てくれたんだから。それにどうせ全部処分してしまうんだし」
……処分……。
その言葉から冷たい雰囲気を感じて、あたしはちょっと困惑した。
そりゃ当然、いつまでも入江さんの日用品を、そのまま放置はしていられないんだろうけど。
でも普通そういうのって、『整理する』とか言わない?
『どうせ全部処分する』って言い方は、少し乱暴っていうか、あんまり優しさを感じられないんだけど……。
「じゃあ、二階へどうぞ。階段を上がってすぐの部屋ですから、ごゆっくり」
そう言って彼女は、スマホを片手に和室から出ていってしまった。
残されたあたしと凱斗は顔を見合わせる。
「どうしよう」
「勧められたんだから、行くしかないだろ。入江の部屋に」
「そう、だよね」
でも、なんか気が引けるな。
彼女のプライベートの領分に、土足で踏み込むような申し訳なさを感じる。
あたしは凱斗と一緒に和室を出ながら振り返り、位牌に向かって『ごめんね』って心の中で話しかけた。
もちろん位牌が答えるはずもなく、ただポツンと、お線香の白く細い煙に包まれているばかりだった。