君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨
玄関正面の階段を上がると、すぐに入江さんの部屋が見つかった。
扉のドアノブに、『こばなのおへや』って書かれた木製の四角いルームプレートが下がっている。
これ、お手製だ。たぶん小学生くらいの頃の図工の作品だと思う。
色とりどりの絵の具で可愛らしく、文字やお花模様がたくさん書き込まれている。
なんだか入江さんの過去に、ちょっとだけ触れたような気がした。
ドアノブをカチャリと回して扉を開けると、真正面の窓のカーテンが閉まっていて、中は薄暗い。
スチール製の勉強机に、ピンクのイス。
白い本棚と、木目調のクローゼットと、青い水玉模様のクッション。
女の子らしいインテリアが、ここに間違いなく、ちゃんと入江さんが存在していたんだって感じさせる。
なのに、いまはもう、彼女はいない。
それが不思議な気がした。
形見分けをもらうつもりはなかったけれど、なんとなく周囲をキョロキョロと眺めてしまう。
真っ先に、勉強机の上の、何個も飾られている写真立てに目がいった。