君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨

 そのことにまた罪悪感を感じる心のどこかで、安心もしている。

 この人が悲しんでくれていてよかったって、思ってしまった。

 ところが、そんなあたしの思いに反して……。

「なんで? なんであたしが、こんな目に遭わなきゃならないの? あの子が死んだせいで」

 聞こえてきた言葉は、正反対のものだった。

 思わず顔を見合わせたあたしと凱斗の耳に、どんどん意外な言葉が聞こえてくる。

「そりゃ、ある程度の覚悟はしてたわよ。思春期の女の子の母親になるんだもの。でもまさか、こんなひどい仕打ちをされるなんて!」

 誰にも聞かれていないと信じ込んでいる彼女は、スマホに向かって感情をぶつけるように吐き出し続けている。

「あの子ったら、あたしのことイビッて家から追い出そうとしてたのよ!」

 グスグスと鼻を啜る音が聞こえる。

 その音と一緒に、入江さんの世界の、秘密の扉のカギが外される音が聞こえた気がする。

 お母さんの涙声が、その扉を大きく開いていった……。



< 152 / 274 >

この作品をシェア

pagetop