君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨


 そうよ。

 初めて紹介されて会ったときから、あたし嫌な予感してたわ。

 だってあの子、全然あたしの顔を見なかったの。

 これでもかってくらい、露骨に目を逸らしてこっちを無視してた。

 それでもあたし、一生懸命笑顔で接したのよ。

 思いつく限り、いっぱい話しかけたわ。

『小花ちゃんのこと知りたいから、いろいろ教えてね』って。

 でも完全に無視されたの。

 なにを聞いても、まともに答えてくれない。

 ムスッと無表情に黙り込んで、あの子、窓の外ばかり見てたわ。

 いくらこっちが笑顔で接したって、見てくれなきゃ意味ないじゃない。

 お前の顔なんか見たくもない。

 お前の声なんか聞きたくもない。

 あたしはあの子に、無言でそう宣言されたの。

 あたしの努力も存在も、最初からそうやって全否定されてしまったのよ。

 それでもあたしは諦めなかった。

 あの子の母親として、あの子のために頑張ったわ。

 掃除も、洗濯も、食事の用意も、全部。

 仕事があって忙しくて大変だったけど、認めてもらいたい一心で、休む間もなく頑張った。

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