君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨

 それってつまり、あたしのことは母親として認めていないってことよ。

 あの子はあたしに……母親になろうと必死に努力しているあたしに向かって……

『自分の母親は、死んだ実の母親だけだ』

 って、これ見よがしにアピールしたの。

 もう、どうすりゃいいのよ。

 ここまで徹底的に拒絶されて。

 それでもあたしの方から、あの子に歩み寄れっていうの?

 冗談じゃないわよ。

 あたし、お腹に赤ちゃんがいて体調も悪かったし、あの子にばっかり構っていられない。

 だからもう、好きにしろって思ったわ。

 そのうちにあの子も大人になって、いつか自分の行いを恥じて、あたしに謝ってくるだろうって思ってた。

 ……あの日。

 あの、雨の日までは。

 雨の日に、ビショ濡れになって学校から帰ってきたあの子が、物も言わずに自分の部屋へ駆け込んだの。

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