君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨

 あたしと口をきかないのはいつものことだけど、なんだか様子が普段とは違ってて。

 ちょっと気になったのよ。体が濡れたままじゃ風邪を引くし。

 だからね、タオルを持っていってあげたの。

『これ、使って』ってドアの外から声をかけて、廊下にタオルを置いたのよ。

 そして階段を降りていって……。

 途中で滑って、転んだの。

 階段が濡れていたから。

 そしてお腹を打って……流産、した……。

 病院で医者に言われた。

『妊娠初期の流産の原因は、赤ちゃんの方に問題がある場合が多いんです。お母さん、自分を責めないでくださいね』って。

 違う。そうじゃない。

 お腹の子が悪いんじゃない。あたしが悪いんでもない。


 あの子のせいなのよ!


 ええ、言われなくてもわかってる。

 あの子に責任はないって、言いたいんでしょ?

 たしかにそうよね。その通りよ。

 あの子があたしを、階段から突き落としたわけじゃないんだから。

 あの子に責任はない。

 でも、あの子の『せい』なのよ。

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