君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨

 だってあの子が、濡れて帰らなかったなら。

 あの子が、自分でタオルを持っていってたなら。

 あの子が、もっとあたしに歩み寄ってくれていたなら。

 きっと流産なんてことにはならなかった。

 しかもあの子、自殺するなんて……。

 どれほどあたしがショックだと思う!?

 流産した直後に、継子に自殺されたのよ!?

 打ちのめされたなんてもんじゃない!

 流産したばかりなのに、葬儀の準備に駆け回るあたしを見ながら、事情を知らないご近所が陰でコソコソと噂するのよ。

『きっと継母が、ひどい仕打ちをしてたんじゃないか? かわいそうに』って。

 冗談じゃないわよ! ひどいことされたのは、あたしの方よ!

 これは、あの子の復讐よ。

 再婚した父親への。そして父親を奪ったあたしへの。

 あの子は、自分の命をかけて復讐したのよ。

 なんて恐ろしい子。

 あんな子と今まで一緒に住んでいたなんて、あんな子を娘と思おうとしていたなんて、ゾッとする。

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