君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨

 ……凱斗が、あたしの肩を抱いて、そっと扉から引き離した。

 そしてあたしを、ゆっくりと玄関の方へ連れて行く。

 あたしは、まるでどこかに部品を落としたロボットみたいに、ギクシャクと歩いていた。

 意識が半分、持っていかれたような気がする。

 大きな何かを背負ってしまった心が重くて重くて、口もきけない。

 ただ現実を受け止めるだけで精いっぱいのあたしは、なにも考えずに、靴を履いた。

 そして凱斗に手を引かれ、玄関を出る。

 扉が閉まる瞬間、和室の奥の入江さんの位牌がチラリと見えた。

 そして開かれた扉は、位牌の残像を残して、カチャリと音をたてて閉じてしまった……。




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