君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨

 凱斗先輩の方は、向坂先輩のことをどう思っているんだろう?

 特別な存在なのかな?

 前に付き合っていたあたしよりも、特別な人なの?

 そう考えるだけで、心臓が燃えるように痛くて痛くてたまらなくなる。

 凱斗先輩にとって、あたしはもう過去の存在なのかな?

 もう、いらなくなっちゃったのかな?

 お父さんにとっての、死んじゃったお母さんみたいに?

 ……そんなの嫌だ。

 怖い。あたし、向坂先輩が怖いよ。

 向坂先輩の存在が、大きな大きな影みたいに、あたしをバクリとのみ込んでしまいそう。

 悲しみと苦しみばかりだった毎日を、救ってくれた凱斗先輩。

 あなたは、あたしにとって希望の糸のような存在なんです。

 真っ黒な雨雲から落ちてくる大雨の中で、ほんのひと筋、あたしの手に触れてくれた優しい希望の糸。

 その糸を見失ったら、迷子になっちゃうよ。

 あたし、今度こそ一歩も動けなくなっちゃうよ。

 だからお願い、どうかあたしを離さないで。

 あたしの手から、抜け落ちてしまわないで。

 吐きそうになるくらい、強烈な不安に押し潰されそうなあたしを見かねた美弥が、アドバイスしてくれた。

『凱斗先輩を、相合傘に誘ってみたら?』って。

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