君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨
雨に打たれて

 日記は、突然そこで終わっていた。

 それ以上は、どこにも文字が綴られていなかった。

 ただ罫線と、白い空欄だけがあった。

 あたしの目の前に彼女の世界はもう、ない。

 見えるのは、宵の色に染まった川の水の表面が、皮膜のように滔々と流れていく姿だけ。

 橋の上を絶え間なく行き交う車のライトと、その排気音が聞こえるだけ。


 ああ、入江小花さんは、死んでしまったんだ。

 今ほどその事実を思い知ることはない。

 入江さんはもう、いない。

 だから彼女が、この続きを書くことは、二度と無いんだ。


 広い広い、入江小花という名の世界の中を、文字に導かれるように歩いた。

 なのに、あまりに不意に世界はここで終わっていた。

 あたしも凱斗も、その喪失感の大きさに、身じろぎもせずに茫然と立ち尽くしている。

 そして願うように日記の続きを求めて、ページをめくってみた。

 ……でも、やっぱりもう、入江さんの世界はどこにもなくて。

 あたしと凱斗はまた、嫌というほど思い知る。

 入江さんの自殺は、やっぱりあたしたちのせいだって。

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