君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨

 本当に凱斗だけが、たったひとつの彼女の生きる希望だったんだ。

 だけど凱斗は、あたしのために相合傘を断ってしまった。

 あたしが、彼女から凱斗を、生きる希望を奪った。


 それは、彼女の事情を知らなかったとか。

 責任のあるなしだとか。

 良いとか、悪いとか。

 そうじゃない、これはもう、そういうことじゃない。

 ただそれが、事実なんだ。

 事実が事実として、あたしと凱斗の胸に、深く刻まれてしまった。

 ただもうそれだけが、どうしようもないほど圧倒的な、『事実』なんだ。


 凱斗が、周囲の空気よりも暗く沈んだ表情で、瞬きもせずにノートをじっと見つめ続けている。

 凱斗も同じことを考えているって、あたしにはわかった。

「日記、読み終わったなら返してください」

 中尾さんがそう言って、こっちに手を伸ばしてくる。

 あたしは黙って日記を渡し、それを受け取った彼女は大事そうに胸に抱え込んだ。

「これ、小花が死んだと知ってすぐ、あたしが小花の部屋から持ち出したんです。あの人たちには読ませたくなかったから」

「あの人たち?」

「小花の両親です」

 それを聞いたあたしは思わず、問いかけた。

「見せなくてもいいの?」

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