君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨
うつむきがちに視線を落とす中尾さんは、学校の中庭で会ったときとは別人のようだった。
あたしを射抜くように見ていた目から力はすっかり失せて、弱々しく、ぽつぽつと言葉を吐き出している。
「嬉しかったんです。凱斗先輩と再会してから、小花がどんどん元気になっていくのが」
守るようにノートをゆっくりと撫でさする、細い指先。
「だから、もっともっと元気になって欲しくて、調子いいことばかり言ったの。期待できるとか、可能性高いとか、きっと大丈夫とか」
川を渡る夜の風が彼女の髪をふわりと乱して、唇にひと房、張りついた。
それを払いもせずに、中尾さんは話し続ける。
「励ましているつもりだった。でも、違った。あたしは、そうやって小花を追い詰めていた」
そして……。
「あたしに乗せられて告白した小花は、結局死んだ。あたしがこの手で、背中を押してしまったんです」
彼女の唇がワナワナと震え、鼻が詰まったような涙声になる。
両目に盛り上がる涙が、橋の街灯に照らされて光って見えた。
何度も何度も鼻をすすりながら、吐き出す空気が嗚咽になった。
「どうして? どうして?」
震える涙声が、同じ言葉を繰り返す。
「どうして? どうしてなの?」