君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨
「う、あぁ! うああぁぁーーー!!」
中尾さんはしゃがみ込み、肩を大きく震わせて泣きじゃくる。
あまりに激しく泣きすぎて、何度もえづいて、吐きそうになった。
そのたびに彼女は、日記を放すまいと胸にしっかり抱え込む。
あたしは思わず駆け寄って、せめて慰めようと肩に手を伸ばしたけれど……できなかった。
慰める? なにを、どうやって?
いったいどう彼女を慰められるというんだろう?
あたしも凱斗もバカみたいに突っ立ったまま、唇を結んで彼女をじっと見守り続けるしかない。
「もう……行って」
やがて……ようやく泣き声も静まった中尾さんが、呆けたようにポツンと言った。
「もう、行って。行って。お願い、ひとりにして」
しゃがみ込んだまま背中を丸めて、川を見ながら中尾さんは繰り返す。
魂が抜けたような寂しいその声に、逆らうことはできなかった。
あたしと凱斗は無言で数歩、後ずさる。そして彼女に背を向けて、ゆっくりと河原を歩き出した。
斜面を上り、橋を渡りながら、川べりの彼女を見下ろして歩く。
闇に溶け込むような姿が少しずつ遠ざかり、そして、完全に見えなくなった。