君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨
すっぽりと濃紺に包まれた物寂しい夜の世界の中を、言葉もなくあたしたちは進んでいく。
住宅街に入ってしまえば、車通りもなく、ほとんど人影もない。
そんな、昼とはまったく違った無機質な静けさが、心細かった。
それでも道なりの家々の窓灯りや、点々と建つ電信柱の小さな灯りが、ぼうっと闇を照らしてくれている。
あたしはその灯りに助けられるように、前を歩く凱斗の背中を見つめた。
でも、前を向く凱斗がいまどんな顔をしているのか、わかるようでやっぱりわからないのが寂しかった。
一歩一歩、歩くごとに寂しさが胸に募っていく。
―― ポツ、ポツ……
頬と肩に、続けて雫が当たるのを感じた。
続いて髪、胸、手も、立て続けに濡れる感触がする。
……雨だ。
あたしは空を見上げた。
弱々しい夜の雨は、昼の銀色の雨と違って、闇に紛れてほとんど見えない。
あの日。凱斗と相合傘で帰った、あの日。
あたしにとって、雨は世界のすべてを洗うように美しく、喜びや、願いや、夢や、祈りに満ちていた。