君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨

 しばらくして、覚悟を決めたように凱斗は大きく息を吸い、長くゆっくりと吐き出す。

 そして小さな声でたったひと言、「わかった……」と告げた。

 凱斗はしっかりと傘を握り直して、足早にあたしの横を通り過ぎる。

 すれ違う瞬間の、青い傘の下の諦めた表情があたしの目と心に焼き付いた。

 遠ざかっていく凱斗の足音を聞くのは、これで何度目だろう。

 そんなことをボンヤリと思いながら、身じろぎもせずにその場に立ち尽くす。

 指の先に落ちた雨粒が、爪を伝って地面に落ちた。

 悲しみも、苦しみも、そうして体からぜんぶ抜け落ちてしまえばいいのに……。

 完全に足音が消え去って、ポツン、ポツンと降る雨音以外なんの音も聞こえなくなって、孤独と静寂が訪れた。

 ひとりになったあたしは天を仰いで両目を見開き、暗い空を見上げる。

 暗幕のような雨雲のたちこめる空から、思い出したように雨粒が途切れ途切れに落ちてきた。

 ああ、きっと入江さんが泣いているんだな……。

 責めるように頬を打つ雨に、なんの根拠もなくそう感じた。

 夜の空、夜の空気、夜の雨。

 息を殺したように静まり返った別世界にのみ込まれて、ひとりぼっちで、あたしも泣いた。

 誰にも邪魔されずに泣けることだけが、救いだった。

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