君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨
『ともだちでいよう』
それは、あたし自身が凱斗に向けて言った言葉だ。
それを凱斗に言われて、いまさらこんなに動揺するなんて。
生徒玄関の低い階段をのぼる凱斗の後ろ姿を見つめるあたしの心は、さっきまでとは違った切なさと痛みを感じていた。
サッと風が吹いて、あたしの髪を乱して通り過ぎていく。
すぐそこの洗い場に張られていた水にも風が吹いて、鏡のように穏やかだった表面を揺らした。
前庭の木々の葉がサワサワと音をたてて揺れ、あたしの心も同じように揺れている。
友だちって言われて、あたしは傷ついてる。悲しんでる。
それはつまり、あたしの心は『やっぱり友だちなんかじゃ嫌だ』って叫んでるってことだ。
裏と表。本音と欺瞞。亜里沙の言葉が脳裏に甦ってくる。
真っ正直で嘘のない亜里沙には、あたしの薄っぺらい感傷なんてお見通しだったんだ。
ほんとだね。亜里沙。
あたしって、マジでバカの極みだね。
でもさ、いまさらもう、どうにもならないよ。
あたしと凱斗の間にある、『入江小花』という世界は、どうにもならない現実なんだよ。