君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨

 そんな期待に満ちたあたしの耳に、クラスメイト達のハシャぐ声が聞こえる。


「あ、ホラ見て相合傘発見!」
「あっちにもいる!」
「あれって沢田先輩と村山先輩じゃん!」
「知らなかった! 意外な組み合わせー!」

 騒ぎ立てる声につられて、他の女子達も目を輝かせながら近寄ってくる。

 みんな窓ガラス越しにカップルを発見しては、口々に黄色い歓声を上げていた。

 男子はそんな女子達をバカにしたように笑って見ているけど、本心では興味があるのはバレバレ。

 その様子を横目で眺めていた亜里沙が、冷めた口調でつぶやいた。

「すっかり元通りになったね」

 その言葉に込められた意味を理解して、あたしは小さくうなづいた。

 ……実は一ヵ月ほど前に、うちの学校で大事件が起きた。

 1年生の女子生徒が、突然自殺してしまったんだ。

 しかも事件が起こったのは、あたしと凱斗が一緒に下校した日の夜。

 翌日、なにも知らずに浮かれ気分で登校したあたしは、校内に漂う緊張感と自分の幸福感とのギャップにひどく戸惑った。

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