君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨
優しい、穏やかないつもの表情で、凱斗は言葉を続けた。
「だから、あんたの気持ちはわかったうえで、それでも言えるよ。藤森が生まれてきてくれてよかったって」
凱斗の静かな、でも揺るぎない態度と声が、荒れた空のようなあたしの心を徐々に鎮めてくれる。
……うん、そうだね凱斗。あたしたちは、ちゃんとわかってるんだ。
亜里沙の存在が、おじさんやおばさんを苦しめているのは事実。
だけど亜里沙の存在が、間宮くんやあたしたちの心を救ってくれたのも事実。
どちらも同じ、事実なんだよ。
「おじさん、おばさん」
それをわかっているあたしは、ただ、こうして告げればいいだけなんだ。
揺るぎない、この事実を。
「亜里沙を産んでくれて、育ててくれて、本当にありがとう」
「…………」
おじさんとおばさんが、虚を突かれたような顔をした。
それまでずっと黙って立ち尽くしていた亜里沙が、いきなり身を翻して駆け出していく。
「亜里沙!?」
「藤森!?」
あたしと凱斗は血相変えて亜里沙の後を追う。
亜里沙はすごい勢いで玄関から外へ飛び出し、そのまま走り続けた。