君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨
「……俺、ちょっと自販機探して飲み物買ってくるわ」
凱斗がそう言って、この場から離れて行った。
しばらくの間、あたしと亜里沙をふたりきりにしてくれるつもりなんだろう。
ありがとう、凱斗。
「座ろうよ」
「うん」
お互い話すきっかけを探すように、遊具に群がる子どもたちや、犬の散歩をしている親子連れで賑わう公園の様子をしばらく眺める。
そのうち亜里沙が、公園中に溢れる嬌声に紛れながらポツンと言った。
「奏、ごめんね。なんにも言ってなくて」
落ち着いた表情で話す隣の亜里沙を見ながら、あたしも答える。
「ううん。言えない気持ち、わかるよ」
「あたし、こんな不幸な境遇に負けてたまるか!って虚勢張ってるとこがあってさ。でも口に出したら、張りぼてがボロボロ崩れちゃいそうで、怖かったの」
「つらかったね……」
「うん。自分の生命誕生からして否定されるって、正直すっごくつらかった。遺伝子レベルの問題って、自分じゃどうしようもできないし」
亜里沙自身に罪のない、責任のない、どうにもならないこと。
出口のない苦しみは消えることなく、膨れあがるばかりで、誰もかれもを傷つける。