君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨
亜里沙は胸ポケットから生徒手帳を出して、中に挟んであった紙を取り出した。
それを広げて、キョトンとしているあたしに見せてくれる。
「これ、覚えてる? 去年のあたしの誕生日に奏がくれた、バースデーカード」
そのカードには、たしかにあたしの文字で、こう書かれていた。
『はっぴーばーすでー亜里沙! 生まれてきてくれてありがとう!』
目を見開いてカードを見つめるあたしに、亜里沙は嬉しそうに言う。
「毎日毎日、今日死のうか、明日死のうかって考えてた。そんなときにこんなカードもらっちゃったらさ……」
ニコリと細められた亜里沙の目尻から、涙が一筋、零れ落ちた。
「生きるしか、ないじゃん」
ぶわっと両目が潤んで、亜里沙の姿が見えなくなった。
両手でゴシゴシ涙を拭いても次々と涙が溢れて、目の前のカードが霞んでしまう。
負けずにあたしは、何度も何度も自分の涙を拭いた。
涙が溢れて見たいものが見えないのなら、拭けばいいんだ。
何度でも何度でも、拭いてやる。
そしてあたしは、この目でしっかりと見るんだ。
きっと亜里沙もそうやって、何度も何度も見ただろう、涙で文字の滲んだバースデーカードを。