君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨
校門前、雨色に染まるキスをした

 次の日。

 いつも通りに登校したあたしと亜里沙は、いつも通りの一日を過ごした。


 あの後、亜里沙が自宅に帰ってから両親とどうなったか心配だったんだけど、べつに何がどうなった、ということもなかったらしい。

 両親とも、それぞれ亜里沙になにか言いたい様子なんだけど、それが言葉にならずに困惑しているみたいだって亜里沙が教えてくれた。

 まったく大人ってしょうがないなーと思いつつ、その気持ちは理解できる気がした。

 だって大切なことほど、言葉にして相手に伝えるのは難しい。

 その大変さは、きっと大人も子どもも同じなんだ。

 子どもにとって親は特別な存在だけど、だからって親が神様みたいに完璧な存在かというと、そうじゃないんだし。

 離婚を前提とした別居も、予定通り進めるらしい。

 あの出来事があったからといって、素晴らしく劇的な変化が訪れるという、都合のいい展開はなかった。

 それでも亜里沙は、

「別居すれば、両親が怒鳴り散らして声を枯らすこともなくなるし、家の貴重品が壊れることもなくなるし。これって前進よ」

 って、あっけらかんと笑った。

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