君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨

 だから凱斗と、傘を差して歩きたい。

 ただそれだけでいい。

 今日、こうして並んで歩くことが、ふたりの明日へ繋がって、それがあさってへと繋がっていく。

 今日も、明日も、あさっても、そうしてあたしは生きていくって決めたんだ。

「向坂、俺と相合傘してくれるか?」

 あたしの目を真っ直ぐに見つめ返す凱斗の目と、問いかけてくれる言葉。

 それはふたつの世界が繋がって、変わっていく予兆。

「うん」

 あたしは力強くうなづいた。

 目の前の凱斗は本当に嬉しそうに笑って、あたしに向けてグッと傘を差しだす。

「よし、行こう!」

 お互いに答えを出し合ったあたしたちは、ひとつの傘の下で肩を並べて、校門へ向かって歩き出した。

 綺麗に晴れた天気の中、雨傘を差して進むあたしたち。

 周り中から好奇の視線を感じるし、クスクス笑う声も聞こえるし、呆れてるみたいな顔も見える。

 それでもいいの。ちっともかまわない。だって、ほら……。

 あたしの世界はもう、変わり始めている。

 革靴の裏に感じるアスファルトの感触。髪を揺らす風の香り。花壇に咲いてる小さな花の色。

 どれもこれも、ささやかなことばかり。だけどすべてがこんなに鮮やかで、目を見張るほど。

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