君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨
そしてなにより……凱斗。
キミの隣で感じるこの胸の高鳴りは、昨日までのあたしは知らなかったもの。
心の奥から溢れてくる、晴れやかな誇らしさと、くすぐったいほどの照れくささ。
まだ見ぬ世界へ抱く淡い憧れと、ほのかな不安が入り混じる。
この胸に芽生えた、言葉にするのも難しい感情は、きっと凱斗と関わり合うことでしか見つけられなかったものだ。
―― パラパラパラ……
ちょうど校門に差しかかったとき、傘に何かがぶつかる小さな音がした。
同時に上を見上げたあたしと凱斗は、同時に大きく息をのんで立ち止まる。
澄んだ青空から、銀の粒を撒き散らすような雨が降りそそいでいた。
白と灰色の混じった雲が流れる大きな空から落ちる雫が、日の光を受けて輝きながら、贈り物のように地上を包み込む。
校舎が、植物が、グラウンドが、道が、人々が、まんべんなく不意打ちの雨色に染まった。
これ、天気雨だ。
『狐の嫁入り』なんて風流な名前でも呼ばれるくらい、出会いたくてもなかなか出会えない、稀な気象現象だ。
「うわあ……」
思いもよらない光景に心を奪われているあたしの名前を、凱斗が呼んだ。
「奏」
そして振り向くあたしの唇に、不意に凱斗の唇が重なった。