君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨

 少し離れた生徒玄関でも、大勢の生徒たちが飛び上がって大騒ぎしていた。

 まるでお祭りみたいな集団の中で、たったふたりだけ、静かに向かい合っている生徒の姿が見える。

 亜里沙と間宮君。

 ここから見てもはっきりわかるくらい、顔を真っ赤にした間宮君が、直立不動のガチガチな姿勢で亜里沙になにかを告げている。

 亜里沙はそんな彼のことを、いつもの皮肉な態度はまったく見せずに、おとなしく黙って見つめていた。

 世界と世界が触れ合う瞬間。いまふたりは、なにを感じているんだろう。

 そしてこれから、どんな風に関わり合っていくんだろう。

 きっと泣いたり笑ったり、悩んだり傷ついたりしながら、それでも一緒に見つけていくんだ。

 これまでの自分たちが知らなかった世界を。

 校舎の各クラスの窓辺にも、生徒達がびっちり集まっていて、窓から身を乗り出すように歓声を上げている。

 四階の窓辺の端っこに、見覚えのある顔を見つけた。

 ……あれは中尾さんだ。中尾さんがこっちを見ている。

 あたしと目が合った彼女は小さくうなづいてくれた。

 あたしも彼女に向かって微笑みながらうなづき返す。

 そして細い雨に頬を濡らしながら、天を見上げてゆっくりと両目を閉じた。

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