君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨
……入江さん。あたしね、生きていこうと思うんだ。
こんな、思いがけず青空の下で雨に濡れてしまうような、不条理な世界の中で。
一寸先に何がおこるのかもわからない、濃霧に包まれた『だまし絵』みたいな世界の中で。
怖いよ。すごく不安だよ。
思いもよらない出来事がおきてしまう世界なんて、とても怖い。
こんな世界で生きていれば、またいつか必ず悩んで、苦しんで、誰かと傷つけ合う日がくると思う。
知っていながら、その日に向かって歩いていかなきゃならないなんて。
でもね、それでもこの世界には、亜里沙が生まれた。
中尾さんも生まれて、間宮君も生まれた。
そしてなにより、凱斗が生まれてくれたんだ。
たとえこの先どんなに傷つき泣く日がきても、生まれてくれてありがとうって、出会ってくれてありがとうって、思える人が存在する。
かけがえのない人と関わり合って触れ合って、自分の世界が変わっていく。