君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨
雨の音を聞くと、嫌でも思い出してしまうのに。
凱斗と一緒に歩いた、あの幸せな時間を。
そして青い傘が遠ざかって行く、さっきの光景を。
まぶたの裏に浮かぶ凱斗の笑顔や後ろ姿が、涙で霞んだ。
体の傷が雨の湿度でジクジク痛むように、心の傷が疼いている。
……明日からは、ちゃんと学校に傘を持って行こう。置き傘もしよう。
傘を持って行かなかったせいで、変な勘違いをすることになってしまったんだもの。
もう勝手な希望を抱くこともない。
凱斗と話すことも、一緒に下校することも、もう二度とないだろう。
だって……あたしは失恋したんだ。振られてしまったんだから。
薄暗い部屋で窓ばかり眺めていたら、なんだか外の景色が一枚の絵みたいに思えてきた。
銀色の額縁の向こう側は、ほんの窓ガラス一枚を隔てた、ひどく暗くて非現実的な寒々とした世界。
ただでさえ寂しいその世界が、涙で潤んで見える。
あたしは電気もつけずに、窓を伝い落ちる雨の形を見つめていた。