君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨
階段を上がりきった所であたしは、ギクッと体を強張らせながら立ち止まってしまった。
あたしの教室の手前に、凱斗がいたから。
うちのクラスの仲良しの間宮(まみや)君と立ち話をしている姿を見て、あたしの心臓がバクバクと嫌な鼓動を打ち始める。
「…………」
あたしは唇をキュッと噛みしめ、うつむきながら歩き出した。
凱斗の真横を、緊張しながら急ぎ足で通り過ぎ、教室に逃げ込む。
いつもならお互い笑顔で朝の挨拶を交わすのに、今日は無言のままだった。
凱斗は、こっちを見ようともしない。
この不自然な空気が、昨日とは変わってしまった関係を自覚させて、心の切り傷が膿んだようにジクジクと痛んだ。
この痛みがどうしようもなく悲しくて、つらくて、苦しくて、切なさが胸いっぱいに溢れる。
でも凱斗が悪いわけじゃないし、そもそも失恋なんて、誰かを責めるようなもんじゃない。
これはもう、どうしようもないことなんだ。
だからせめて早めに気持ちを切り替えて、忘れてしまうに限る。