君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨

「あたしお母さんに車で迎えに来てもらうけど、奏も一緒に帰らない?」

 ―― ギク……

 亜里沙の親切な申し出に、あたしは中途半端な笑顔を見せながら首を横に振った。

「い、いいよそんな、悪いもん! あたし歩いて帰るよ!」

「歩くって、傘持ってないんでしょ? 遠慮しないで。奏の家なら車ですぐだし」

「いやいや大丈夫大丈夫! 今すぐ帰ればまだそんなに濡れないだろうから、すごく大丈夫!」

 首だけじゃなく、両手も全力でブンブン横に振って必死に遠慮した。
 だって絶対、車なんかで送られるわけにはいかない。

 今日、あたしは歩いて校門を通りたいの。

 ずーっとずーっと、雨が降るのを待ち続けていたの。

 一ヵ月も待ち続けて、その日がついに来たんだから!

 ……ね? 凱斗(かいと)……。


 あたしは心の中で凱斗に呼びかけながら、あの日のことを思い出していた。

 思い出すたびにくすぐったい気持ちになる、あの忘れられない特別な、あの時間。

 とても綺麗な世界の中で、あたしと凱斗の間に素敵な希望が生まれた、あの時のことを……。





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