君の消えた青空にも、いつかきっと銀の雨
言葉に詰まって視線を逸らすあたしを見て、亜里沙も様子を伺うように黙ってしまう。
「……とにかく、時間がないから行こう」
沈黙を断ち切るように亜里沙があたしを促し、準備室から連れ出した。
どうしよう……。
凱斗へのあたしの気持ち。凱斗がくれた言葉。
凱斗に抱きしめられた感触。凱斗に置き去りにされた悲しさ。
あたしの頭の中は全部全部、凱斗で一杯で、1ミリの余裕もない。
息をするのも苦しいくらいで、こんな気持ち、どうすればいいのかわからない。
亜里沙になにも話せていないことも気づまりで、どうしても足取りが重くなる。
教室にも、戻りたくない。泣いた直後だから絶対みんなにバレちゃうよ……。
亜里沙から2、3歩遅れて、うつむきながら廊下を歩いていたら、亜里沙が前を向いたまま、明るい声で話しかけてくる。
「ね、奏。今日さ、学校終わったらどっか一緒に行かない?」
あたしは顔をあげて、亜里沙のストレートロングヘアを見つめた。
ほんのり優しい琥珀色の髪が、ユラユラと誘うように揺れている。
「あー、でも雨降ってるしなぁ。そうだ、奏の家にお邪魔してもいい?」
「…………」
「途中でさ、コンビニ寄って奏の好きなお菓子と飲み物、いっぱい買って帰ろう」
チラッとこっちを振り返り、亜里沙は笑った。
「お邪魔させてもらうんだから、今日は全部あたしのおごり。特別大サービス」